八十島親徳 日録 1909（明治42）年 （八十島親義氏所蔵）
十二月十八日 晴
今朝飛鳥山邸ニ伺候ス ○中略
偖大川平三郎氏其他彼是来客ハアリシモ、男爵及令夫人ニモユルユル御面会ヲナシ、食事乍ラ彼地ノ壮大ナル事共色々ノ見聞雑談ヲモ承リタリ、又留守中予カ主管事務即稷山ノ事等モ大要御報告ヲ為ス、又予カ健康ノ状態モ具ニ申陳ヘ且近々転地ノ必要アル事等モ、同情ヲ以テ聞カレ快諾セラル、但ソレニ付テハ元方秘書的事務中英文ノ事ハ佐藤毅氏ニ当分通勤嘱托ノ事、倉庫会社ノ取締上ノ事ハ第一銀行ニモ相談ノ事等注意アリ、而シテ予ニ対シテハ、人生ノ短且小ナル事ハ、地球ノ歴史ノ何万年又天体ノ無極ナル事ニ比シ、生死共天命ト思ヘハ未練モ不足モ無キ筈也トテ、大悟ノ必要ヲ説カル、ト同時ニ苟モ天地ノ間ニ生ヲ享クル以上ハ、之ヲ守ルノ義務ヲ尽サヽルヘカラス、カリニモ麁末ニナスハ天ニ背クモノ也、故ニ人事ヲ尽ス事ハ必要ナル事申迄モ無シトテ、表裏ト縦横トニ説カルヽ処成程ト敬服セリ
○下略
（『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.407-408掲載）
