『渡米実業団誌』 (巌谷季雄, 1910.10) p.264-282
○第一編 第六章 回覧日誌 東部の下
附記 加奈陀分遣隊記事 (田村新吉氏稿)
明治四十二年十月十八日南博士・原博士・渡瀬学士・田村の四氏は、加奈陀地方農商工業視察の為め、分遣隊として紐育を発し、十九日午前七時加奈陀モントリオール市に着す。
十月十九日
曩に加奈陀政府貿易事務官として本邦横浜に駐在せしダブリユ・デイ・アル・プレストン氏は、加奈陀政府派遣官として出張し、我一行を「モ」市に出迎へ、「グランド・トランク」鉄道会社の貴賓専用特別客車に案内し、首府オツタワに向け出発、同日午前十一時オツタワに着し、ラツセル・ホテルに投ず。一行は総理大臣サー・ウイルボドロリエー卿より午餐の招待を受け、大蔵大臣フヰルデイング、農商務大臣フヰツシヤー、労働大臣キング、中村総領事及プレストン、其他上院・下院議員等列席、食を共にす。
午後農事試験場を視察し、場長サンダー氏の邸宅にて、茶菓の饗応を受く。同夜中村総領事より晩餐会の招待あり。一行参会、十一時帰宿す。
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.232-233掲載)
『渡米実業団誌』 (巌谷季雄, 1910.10) p.609-612
○第三編 第九章 雑件
第三節 一行に対する加奈多側の態度
[前略]
其後紐育滞在中、一行の中、南・原両博士、渡瀬・田村の四氏は十月十九日オッタワに着し、二日間滞在、同地方を巡遊してボストンに帰り、一行に投じたる詳細は別項に掲ぐる如し。然るに在オッタワ中村領事の報告に依れば、右一行の加奈多領内旅行中は、加奈多政府より特別常用列車を供給せられ、又プレストン氏は、終始右の四氏に随伴して製造所・工場・学校等の参観の便宜を計り、尚ほオッタワ滞在中総理大臣ローリエ卿は、一行が同市到着の日を以て、午餐会を催して歓迎の意を表し、同夜中村領事の晩餐会あり、[後略]
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.201掲載)