『渡米実業団誌』 (巌谷季雄, 1910.10) p.576-582
○第三編 第五章 徽章及び金牌伝献の件
第一節 実業団渡米紀念金牌
[前略]
越へて十一月二日、一行ワシントン滞在中、国務卿ノックス氏が特に一行の為めに、午餐を饗せられる予定なりしを以つて、其の席にて贈呈の筈なりしも、当時国務卿の家内に不幸ありて、之れを履行し難きを以つて、同次官ウイルソン氏(嘗て本邦に在勤したることあり)代つて一行に午餐を饗し、其席上氏は前日の金牌を提出し、渋沢団長に対して、該金牌は費府造幣局長の寄贈に係り、合衆国政府の承認を以つて、日本 天皇陛下に捧呈したし、依て渋沢男に之れを托し、帰朝の上 天皇陛下に伝献方依頼したき旨演説せり。尚ほ一行の正賓・専門家及び婦人に対し、同型の銀牌を各一個宛贈付したり。渋沢男は右国務次官演説の旨を諒し、帰朝の上は謹んで伝献方取計ふべき旨を答へ、該金牌を落手せり。
右金牌に付き斯の如き手続に出でたる内情は、若し該金牌を米国中央政府より、我 天皇陛下に捧呈するものとなすときは、国際の慣例に由り、在本邦米国大使、又は在米国本邦大使の手を経ざる可からざる次第なるが、素と此金牌たるや、一行の渡米を紀念する為めに調製したるものなるに付、是非共実業団長の手を経て、我 天皇陛下に伝献されんことを希望せしより、之れを米国中央政府の名を以て捧呈することを見合せ、造幣局長よりの献納品となし、而も米国国務省の承認を経たることを表する為めに、殊更に国務卿代理たる次官より、渋沢団長に伝献方を依頼したるものなり。
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.449-450掲載)
参考リンク
- 都市詳細 ワシントン - 渡米実業団
〔渋沢栄一記念財団 渋沢栄一〕
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/1909/city/c39_washington.html